万葉集に歌われている「鹿背山の山樹立を繁み朝去らず 来鳴きとよもす鶯の声」(読み人知らず)の鹿背山(かせやま・木津川市)の山上付近にある鹿背山不動の入り口には、ヒャクニチソウやマリーゴールドが満開で華やかです。一歩境内に入ると全体に鬱蒼とした木々がしげり、薄暗い石不動の祠付近は万葉の時代にタイムスリップしたような雰囲気に包まれています。
 右手には仙人や天女が碁をうったといわれる高さ10メートルほどの巨大な碁盤岩(ごばんいわ)があり、少し登ると鎌倉時代の作といわれる夜尿症を治す地蔵、「しょんべんたれ地蔵」や、室町時代の「春日のおばはん」といわれる地蔵があります。お腹が膨らんでいて春日大社の方角を向いているのにちなんで命名されたようです。
 不動明王(石不動=いわふどう)は、今なお地元の人々の信仰を集めています。火炎を背に剣を持ち、忿怒顔(ふんぬがお)で襲いかかる災難に立ち向かって人々をまもってくれるそうです。不動途上の小さな畑で野良仕事をしていた女性は、「村のみなさんがお参りしてます。まつりの時はみんなで集まります」と話しました。(仲野良典)