ムクゲの花 上京区鞍馬口の西林寺(さいりんじ・通称もくげ地蔵)の境内には、ムクゲ(木槿=モクゲとも)の花が猛暑から解放され秋風に揺れています。
 西林寺は遠く781年僧都に任ぜられた慶俊(けいしゅん)を開基とする天台宗の寺院。住職の山本真照さんは「慶俊僧都がこの地で朝露に咲き乱れるムクゲの草むらから地蔵尊を感得し、修験道の開祖である役行者(えんのぎょうじゃ)が当寺院付近の松の根っこに光り輝く石があり、掘り出して一体の地蔵尊を刻んだと言い伝えられ、いつしか『もくげ地蔵』と呼ばれるようになった」と語りました。
 ムクゲはインド・中国が原産ですが、花は朝開いて夕刻には萎んでしまうので、人の世も我が身もムクゲのように無常であると説いて「もくげ会」が設立され地元を中心に親しまれています。
 毎年、境内のムクゲの木々にいろいろな色目の花が咲きますが、今年は天候のせいか花のつきようが少ないようです。しかし写真のようにピンクのムクゲの花がさわやかに咲いており、9月下旬まで見られそうです。
 同寺は愛宕山の羽根の生えた天狗が都見物のおりに必ず境内の松で羽根を休めたと伝えらたことから、羽休山飛行院(うきゅうさんひぎょういん)とも称されています。
 「いにしえ乃木槿をとめし法(ノリ)の庭 西の林の名さへたのもし(読み人知らず)」(仲野良典)