Topニュース平和・民主主義 > 大商大事件を語る─林直道大阪市立大名誉教授(8) 戦争への疑問

大商大事件を語る─林直道大阪市立大名誉教授(8) 戦争への疑問 大阪商大事件

平和・民主主義

平和・民主主義

2008年08月20日 11:28

大商大事件を語る─林直道大阪市立大名誉教授(8) 戦争への疑問

 日本学生運動史上の3大事件といわれる「大阪商大事件」について、当時大学生で大商大弾圧の被告でもあった林直道大阪市立大学名誉教授が7日、立命館大学平和ミュ-ジアムで当時の体験を語りました。その内容を12回に分けて再録します。

     ◇

<< (7)京阪神の古本屋で本あさり
 それからもう1つは「日本資本主義の貧弱な生産力では必ず負ける」ということです。これはこの時の議論で言ったんじゃなくて、後に研究会で色んなゼミナールで研究する中で次第にわかってきたことです。近代戦というのは消耗戦であり物量の戦いでもあるわけですから、アルミニウムと鉄鋼の生産力を比較いたしますと、アルミニウムの生産が1941(昭和16)年に日本は7万1千トン、アメリカは30万9千トン。日本の生産力はアメリカの4から3分の1です。この差がどんどん開き、1944(昭和19)年に7分の1に差が開いちゃうんです。鉄鋼はもっと開きが大きくて、1941年の日本の鋼材の生産高は430万トン。それに対してアメリカは7400万トン。17分の1の差が開き、1944年には日本はアメリカの鋼材生産高の30分の1になるんです。

 鉄鋼やアルミは航空機や鉄砲や弾の材料です。だからアメリカの編隊が何百機でワァーっと行く、日本の飛行機が十数機でパラパラっと行く。ぜんぜん歯が立たなくなるんですね。
 日本は零戦という優れた戦闘機を開発し、向かうところ敵なしでアメリカの戦闘機をボンボン撃墜していったわけですね。ところが一機零戦が不時着したのをアメリカが手に入れて分析して、零戦の秘密をアメリカがキャッチし、対抗したグラマンというのをつくって終わりです。日本は初戦こそ長い間の軍国主義、軍事技術優先主義で優れた兵器をつくりましたけど、1回限りでした。その1回が崩れたら途端に物量の戦いになって、日本はぜんぜんだめ。それははじめからわかっていることでしょう。今アルミニウムと鉄と申しましたが、石油なんかだったらものすごい差が開いています。戦略物資の生産能力がぜんぜん違うわけです。

 それから工作機械が違います。日本の産業の中心は繊維産業で、繊維を輸出してその代金でアメリカから工作機械を買い入れていたわけです。だから日本の機械をつくる機械は技術的にも相当遅れていたし、生産能力もない。勝てないのは火を見るより明らかですね。

 それで私たちは「日本の貧弱な生産力では連合軍に必ず負ける。負ければ日本国民は大変な辛苦を味わう。これは後に本土爆撃によって嫌というほどえげつない目に遭いましたよね。敗北と惨禍の運命の見えている戦争に反対し、国民を残酷な運命から免れさせることこそ本物の愛国心ではないか」と考えて、「同世代の人間が戦地で命を落として戦っておる。愛国心も必要ではないか」という考え方を何とか克服しました。
 そんな意味でこの本当の意味での愛国心とは何かというのは一番苦労して、考えに考えてこの結論に到達したんです。(つづく)