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大商大事件を語る─林直道大阪市立大名誉教授(7) 京阪神の古本屋で本あさり 大阪商大事件

平和・民主主義

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2008年08月20日 10:17

大商大事件を語る─林直道大阪市立大名誉教授(7) 京阪神の古本屋で本あさり

 日本学生運動史上の3大事件といわれる「大阪商大事件」について、当時大学生で大商大弾圧の被告でもあった林直道大阪市立大学名誉教授が7日、立命館大学平和ミュ-ジアムで当時の体験を語りました。その内容を12回に分けて再録します。

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 そういう状態の中でも、収穫のある古本屋がありました。京都百万遍から銀閣寺まで大きい古本屋がズラッとあり、たまにトロツキーやブハーリンのようないかがわしい本がある。店主が「あんたこんな本読まはりますの? 他にもおまっせ」言うて、奥の方から出してきました。これが高い。本屋さんだって危ない橋渡ってるんですから、相当マージン取らんと割りに合わんのでしょうが。山田盛太郎『日本資本主義分析』は定価1円30銭でしたが、大体30円が相場でした。平野芳太郎『日本資本主義社会の論争』は定価1円50銭でしたが、大体25円が相場。野呂栄太郎『日本資本主義発達史講座』は10円とかね。
 私はそういう本を買うために家庭教師をしていました。週2日で40円くらいくれるんです。中学生を教えたりしました。それで本買おうとしましたが、どれだけお金積んでも実際に本がなかったんです。

 しかし烏丸丸太町の古本屋で、私は『共産党宣言』のドイツ語版を買いました。岩波文庫の基になったレクラム文庫の『賃労働と資本』の付録でした。『共産党宣言』を買って、コピー機なんかありませんからみんなで手で写して、語学が苦手な者もおりましたけど一生懸命字引使って読みました。いきなり「男爵と農奴」と出てきて、「何でこんなところに男爵が出てくるんだろうな?」と思ったんですが封建領主、土地所有者のことなんですね。みんなで分担しても1日1ページも進まなかったり、2、3ページやってえんこ起こしながらの読書でした。

 それから吉田山付近の古本屋ではアナーキストだという目をギョロっとさせた怖いおっさんが、「今日はいろいろあるで」と言って「戦旗」とか「プロレタリア科学」とか、得体の知れない非合法出版物を山のごとく出してきました。私が「これ全部買うわ」と言うと安うしてくれまして、着ていたマントで風呂敷のように本を包んでゴソッと買ったんです。京阪電車に乗る時に「走ったらあかん。走ったらあかん」言いもって走てるんです。脂汗をかきました。

 私は非常に貴重な左翼文献の持ち主になりまして、「日本共産党公判闘争傍聴記」が「戦旗」に載ってたでしょ。これもみんなで筆写して、研究会で使いました。それから大阪南田辺には古本屋が2、3軒あって気の弱そうな肺結核のおっさんに頼んどいたら「今日入ってまっせ」と言うてくれるんです。それから今の道頓堀から電車を降りて東に渡って、南側に10軒ほど店が並ぶ所に天牛本店という古本の問屋のような大きい店がありました。そこは毎日毎日本が入れ替わるので学校へ行く前に寄り、どのコーナーの本が入れ替わってるかちょちょいと見るだけで1冊くらい収穫がありました。

 本を読まずに買い集めることに一生懸命になっているようですがそこそこ勉強して、「真の愛国心とは何か」とクラスで大激論しました。当時の学生は軍国主義教育受けていて、「だってお前、我々の同世代で学校へ行かん者はみんな兵隊に採られて戦地で苦労してるんだから、お国を愛するためには仕方ない」と言う者もいました。当時の教育をストレートに受けたような学生が多かったんですね。そういう人と大激論して、私は「中国や周りの民族にしてるようなことは侵略で、本当の愛国心じゃない。単なる民族的なエゴイズムに過ぎない。おまけに日本軍が進出すると中国人をただみたいな安い賃金で働かせて、資源を奪ってくる。日本の大独占企業はこれで儲けてるじゃないか」と言ってました。
 こんなん聞かれたらえらいことですけど、始めの内は組織にも何にも入ってませんから怖いもんなしで何でも言ってた。後になって、ヒヤッとしました。(つづく)