大商大事件を語る─林直道大阪市立大名誉教授(11) ケルングループの結成 大阪商大事件
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大商大事件を語る─林直道大阪市立大名誉教授(11) ケルングループの結成
日本学生運動史上の3大事件といわれる「大阪商大事件」について、当時大学生で大商大弾圧の被告でもあった林直道大阪市立大学名誉教授が7日、立命館大学平和ミュ-ジアムで当時の体験を語りました。その内容を12回に分けて再録します。
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<< (10)2つの抵抗闘争 出席聴講強制制度の撤廃
自由聴講制度を守り抜いた喜びに沸き返るころ、1942(昭和17年)年5月21日、河田嗣郎学長が死去しました。5月23日の葬儀に、京都からあの河上肇が参列することがケルングループを通じて学生に知らされました。河上肇というのは河田先生と親友なんです。河上肇がやめさせられる時でも河田嗣郎は法学部教授だったけれどもあえて教授会を欠席して、末川先生のようにその場におって激論して反対されたんじゃないんだけども、欠席することによって抵抗の意思を示されたという人なんですね。
当時河上先生は特高の厳重な監視下におられ、刑期を終えて出ておられたけれど尚、生きておられたんです。学生は河上先生の本を読んで感動していましたが遠い存在で、河上さんが来ると聞いて学生たちの興奮は最高潮に達しました。研究会に加わってた人間以外も、「え、河上肇が来るの?」と言ってたんですよ。ただ仏頂面をしてスゥっと歩いた河上先生を見て、学生は大きな感動を覚え、「この感動をばねにして社会科学研究と帝国主義戦争反対にいっそう馬力をかけよう」と誓いました。
立野保男講師留任嘆願運動と出席聴講強制制度撤廃の闘争を通じて高校、予科、高商部の学生らの交流がすすみ、個性や信頼度もわかってきました。「あいつは非常に陽気で威勢は良いんだけど、口が軽いぞ」とかね。それを土台にケルングループがつくられ、その周囲に研究グループが生まれました。
ケルングループは明石公園でつくられました。上林貞次郎という現役の助教授が、ずっと学生を見ていて5人ほどの学生を自分の研究室に招いて、戦争について話し「日本はこういう戦争に反対しなくちゃならん。だから戦争反対の研究会をつくってみんながマルクスを読み、戦争がどういう本質のものであるか、戦争推進勢力に及ばないまでも1人でも2人でも広げていこう。そのための中心の組織をつくらなければならない」と提案されたんです。私もその1人として呼ばれて、ものすごく感動しました。
大阪商大事件というのは、この時の上林先生の決断というのが非常に大きかったと思います。上林先生というのは大阪商大の第1期生として、1番で出た人で、秀才で頭のいい人でありました。当時早くから助教授になり論文もどんどんお書きになってたし、美人の奥さんもらわはって1男1女あって何不自由なく将来も嘱望されておった人で、絵に描いたように幸せな人でした。その人が場合によっては命を落とすかも知れない、家庭生活も自分の一生もメチャクチャにされかねない、その危険をあえてしたんです。この時の先生の勇気と決断というのは大変なものだったと思いますね。
上林先生は学生時代からマルクスを読み、卒業されたときに色々働きかけがあったようです。地下にもぐって共産党の運動に加わらんかって。いきなり共産党という訳ではなく、今と違って中々共産党に入れてもらえなかったので、反体制的な運動に加わらんかってね。上林先生は考えられて、自分はまだ勉強不足なので、マルクス主義が真理であると確信が持てたらその時に考えさせてくれて言うたらしいです。その言葉に忠実に先生はその後の研究で確信されて、絶対にこの戦争はやめさせないかんて決意された。あの幸せな境遇を犠牲にしても反戦運動に入ろうて決意されたんです。実にすばらしい。
そういう意味で大阪商大事件をいう時には上林先生の名をすてることはできないと思います。数年前亡くなられましたが大阪商大事件の真相という本を書いておられます。(つづく)
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