大商大事件を語る─林直道大阪市立大名誉教授(6) 私の大学予科生活 大阪商大事件
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大商大事件を語る─林直道大阪市立大名誉教授(6) 私の大学予科生活
日本学生運動史上の3大事件といわれる「大阪商大事件」について、当時大学生で大商大弾圧の被告でもあった林直道大阪市立大学名誉教授が7日、立命館大学平和ミュ-ジアムで当時の体験を語りました。その内容を12回に分けて再録します。
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<< (5)戦時下の学生生活
それから思想的飢餓状態。ほしい本が手に入らない。どこにも売っていない。図書館でもカードボックスからカードを抜き出して、別室分置されてるので図書館からも本が借りられません。
卒業生は次から次へと入隊します。大抵の人は兵役法が改定され第3乙種で採られちゃいます。卒業するとほとんどみんなが軍隊へ入れられる。そうすると一定の確率で戦死するので、何かもう死刑の判決受け取るような学生生活でした。人間いつかは死ぬよって言ったってね、何十年か先やからね。無限に将来があるもんですけど。最後には1943(昭和18)年の11月に学徒出陣でもって根こそぎ兵隊にとられちゃったという、悲しい戦時統制下の学生生活でありました。
そういう中で大阪商大には自由な雰囲気がありました。寮がない、自宅から通える。
予科の1年C組、高等商業部の3年B組がデモをやって、特に高商部3Bは「愛国行進歌」の替え歌をやりました。♪見よ東海の空あげて♪ってあるでしょ。♪見よ花魁の裾あげて♪と(歌って)、みんな捕まり、留置場に入れられて家宅捜索を受けた大事件だった。こんな勇気があるというか、元気があったとこは全国どこにもないですよね。こういうのを許すような雰囲気があったんです。
さらに、マルクスの名前は出さないけれども内容は『資本論』に依拠したようなゼミナールがたくさんありました。河上肇先生の門弟だった教授がたくさんいました。当時の大阪商大経済学部の中心を成したような中堅の教授は河上先生の門弟が占めてました。
それから京大の滝川事件で文部省に辞表を叩きつけた6人の教授の内、3人の末川博、恒藤恭、佐々木惣一が大阪商大へ来たんです。それでいっぺんに大阪商大は自由主義の伝道のような様相を呈したんであります。河上先生のお弟子さんでマルクス経済を学んだ教授が中堅教授を占め、末川、恒藤、佐々木という日本の根幹を成す大学者が大阪商大へ来たということで、一気に大阪商大の内容が変わりました。
我々が1番悩んだことは戦争の問題です。一体なぜ戦争なんかするんだと。戦争に行ったら必ず一定のパーセンテージで戦死します。「今日は誰それが戦死した」ということが、学内ですぐ知れ渡る。「あの人も戦死したか」という話題に、本当に死という問題を突きつけられてる気がしました。
当時は戦地へ行ってきた人が帰ってきて自慢話をするんです。「捕虜を殴って穴を掘らせる。そこに座らせといて首を切って、死体を蹴り落としていく」ということを武勇伝として自慢げに言うんです。捕虜を勝手に殺して良いわけないんです。国際法にも反する。まったく日本は虐殺の限りを中国でやったわけであります。三光政策、「焼き尽くし、殺しつくし、奪いつくす」といって、日本は中国で侵略軍の牙を剥き出しにして侵略をほしいままにしました。
我々は「なぜ戦争をするのか。中国の民衆にとって不幸なことで、我々もその中で戦死するんだ。そんなこと絶対困る」と上級生に聞くんですが、先輩は「やっぱりお前さんマルクス読まなきゃだめだよ」と。我々と先輩は「マルクスなんて古本屋にも売ってない」「売ってないか? 今」「ぜんぶ特高が持って行ったらしくて何にも残ってない」と話しましたが、我々はあきらめませんでした。クラス内で相談して、「京阪神の古本屋という古本屋をぜんぶしらみ潰しに探し回ろう。どこかにあるに違いない」と何人かの友人と古本屋を根こそぎ回ったんです。
大抵は何の収穫もありませんでした。「よくこんな徹底的に(没収)されたな」というくらい。マルクスも自由主義も何にもありませんでした。(つづく)
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