喜劇王を殺せ、戦争を始めろ 「週刊しんぶん京都民報」に昨年まで「チャップリンと5・15事件」と題した連載をおこなっていた大野裕之さんがこのほど、「チャップリン暗殺5・15事件で誰よりも狙われた男」(メディアファクトリー、1600円+税)を出版しました。
 「喜劇王を殺せ、戦争を始めろ」─5・15事件を引き起こした将校たちのチャップリンをめぐる死闘を、秘書の高野虎市(1885~1971)の遺品から発見した新資料をもとに、息もつかせぬドキュメンタリー風に描いた歴史フィクションです。
 5月15日、首相の歓迎会に行くはずが、チャプリンは気まぐれで相撲観戦に出向き、暗殺の難を逃れたこと、日本国内の様々な動きに敏感に対応した秘書が、皇居訪問を最優先し、チャプリンに皇居前で一礼させ、軍人らの標的からチャプリンを守ろうとしたことなど、今まで「謎」とされていた事実が、次々と解き明かされています。
 日本チャップリン協会会長、チャップリンの遺族からの信頼も厚い大野氏が、ファシズムの時代の警告と影でチャップリンの命を救った秘書、高野虎市へ捧げた本です。