日本共産党京都府会議員団は25日、新井進団長の見解「2008年度2月定例議会予算特別委員会の開始にあたって」を発表しました。見解の全文は次の通り。
                              ◇
1、2月14日に開会した2月定例議会に、2008年度当初予算案および議案が提案され、本日から審議が始められる。
 予算案は、構造改革路線により痛めつけられ、さらに原油価格高騰などにより、いっそう深刻となった府民の暮らしと営業を、いかに守るのかが真正面から問われるものである。
 わが党議員団は、山田府政2期目の折り返し点を迎える予算案に対し、予算審議を通して、府民の暮らしを守り、中小企業や地場産業を応援する予算となるよう奮闘するとともに、京都府が自治体本来の役割を果たすよういっそう求めるものである。
2、国による「構造改革」路線と「三位一体改革」により、府民への大幅な負担増や地方の切捨てが進み、深刻な格差があらゆる分野、地域、各層に広がっている。ところが、政府・与党は、来年度予算案で、空前の儲けをあげている大企業にはさらなる減税を盛り込み、また、大問題となっている道路特定財源について、暮らしを応援する一般財源化を拒否し、高速道路建設を中心とした59兆円もの道路中期計画を優先し、軍事費は聖域化するなど、およそ「生活者重視」とはいえないものとなっている。
 それだけに、破綻した「構造改革路線」と「三位一体改革」の転換を求めるとともに、「福祉の増進」をはかる自治体の役割を果たすことが今ほど必要な時はない。
 そうした中、昨年の参議院選挙以来、国民の声に応える政治をつくる大きな激動が続いている中で、来年度予算案に、府民の大きな運動と議会での論戦により、いくつかの前進的施策が盛り込まれたことはたいへん重要である。
 その一つが、後期高齢者医療制度の保険料軽減策である。これまでわが党議員団は、後期高齢者医療制度は高齢者に差別医療を持ち込むものと指摘し、実施の撤回を求めるとともに、後期高齢者に新たに保険料負担が増えることに対し、保険料負担軽減への支援を繰り返し求めてきた。今回、後期高齢者医療広域連合が実施する健診経費保険料部分への支援により、保険料全体が引き下げられることとなる。いっそうの負担軽減策の拡充を求めるものである。
 また、すでに昨年の議会で表明されていた「30人程度学級」について、「3年生から6年生の全ての小学校で30人程度の学級編成が実現できる教員を二年間かけて配置する」ため、800人の教員を確保する内容となっている。これは、長年にわたる父母・教職員の要求が実現したものであり、引き続き小・中学校のすべての学年で30人学級実現のため力をつくすものである。
 木造耐震改修助成制度も、市町村が定めた地域も対象とし、住宅の規模要件の廃止、耐震強度を1.0から0.7以上にし、設計費も含むなど、制度の要件を緩和することが示された。これは、京建労をはじめとする団体等の長年にわたる運動により実現したものであり、すでに城陽市と長岡京市で制度化されているが、すべての市町村での実施とともに、耐震改修の促進をはかるよう求めるものである。
 さらに、原油価格高騰により、大きな打撃をうけている中小企業に対する「原油価格高騰対策等特別融資」として、京都府・京都市中小企業融資制度において、原油価格高騰等の影響等により業況が悪化している中小企業の資金繰りを改善するため、長期の融資期間特例制度(10年)が創設された。これまで、議員団として原油価格高騰対策の申し入れを三度にわたり行うとともに、昨年の12月議会でも求めてきたものである。
 以上、主なものを述べたが、他に医師確保対策として5億2000万円、緊急雇用対策として23億6600万円、地上デジタル放送導入による難視聴地域への負担軽減策や限界集落支援策などが盛り込まれることとなった。
3、山田知事は、これまで国が進める「構造改革」路線と「三位一体改革」について、「地方の自由度を拡大し、地方分権をすすめるもの」としてきたが、ここにきて山田知事も自ら「地方交付税の復元・充実」を言わざるを得なくなっている。これはわが議員団がこれまでから指摘してきたとおり、地方財政や暮らしを圧迫してきた「構造改革」路線と「三位一体改革」の行き詰まり、破綻を事実上認めたものである。
 しかし、山田知事は、これまで長年にわたりおこなってきた、府民の暮らしを支える施策を今年も削減し、さらに京都府の自治体としての役割を後退させる、「受益と負担」「自立・自助」を基本とした「経営改革プラン」推進の立場には変わりないことがより明白になっている。
 その一つが私学助成の削減である。私学助成は、これまで私学と私学に通う生徒を直接支援してきたが、教育費負担が大きく膨れ上がるもとで、その制度の充実が求められてきた。ところが、近隣府県の私立高校に通学する生徒1600人への学費軽減補助(一人年間4万8000円)について、新入生から段階的に廃止していくことを盛り込んだ。
 また、難病患者療養見舞金13,000人(一人年間10,000円等)と小児慢性特定疾患患者見舞金2,200人(一人年間6,500円)の廃止も盛り込んだ。これらは、長期間にわたる療養の中、医療費の他、診断書料、受診交通費、日用品費など特別な出費が必要で経済的・精神的負担が大きいため、激励と支援を込めて実施されてきたものである。
 しかも、これらの事業は、一昨年から「事業仕分け」の手法を導入し、外部委員会による「事業仕分け」を実施し、「他府県が実施していない」「個人給付事業は見直す」などとして削減をしたものである。さらに、昨年九月議会で発表され、府民の反対と議会の論戦を通じていったん凍結となった老人医療費給付事業助成費(65歳~69歳のマル老)や国民健康保険事業費なども今後見直し対象とされていることなど、「選択と集中による施策の見直し」として次々と削減を続け、これまで実施してきていた負担軽減策などを今後削減の総仕上げとして踏み込み始めていることは重大である。
 もともと、これらの事業については、長年の関係者の努力と協力で築かれてきたものである。ところが、この「事業仕分け」は直接の関係者の意見を聞かず、廃止・削減しようとする手法であり、これを用い削減の理由を述べること自身に、山田知事の政治姿勢が如実に現れているものである。
4、さらに、本来メスをいれるべき事業にメスが入れられていないことは重大である。
 京都市内高速道路計画のひとつである斜久世橋線の建設促進に3億円、四年間にわたり計12億円支出すること、畑川ダム建設3億2000万円や舞鶴和田ふ頭建設、天ヶ瀬ダム再開発などムダな大型公共事業や、高等学校等奨学金償還対策事業(奨学金の返済肩代わり)の3億8000万円をはじめ旧同和対策に6億8000万円などが計上されている。これらを本格的に見直すことこそ求められている。
 以上、予算特別委員会にあたり、わが党議員団の基本的立場を述べたが、雇用対策、負担軽減策、原油高騰対策や農業支援策など、府民の暮らしと営業を守る上で欠かすことができない対策が切実に求められている。そのためにわが党議員団は、全力をつくすものである。