藤原俊成、定家を祖に持つ冷泉家に伝わる雅な遊び道具を冷泉布美子氏の和歌とともに紹介した『新版 冷泉家の花貝合わせ』がこのほど、出版されました。
 「貝合わせ」(*)には、『源氏物語』からとった絵が描かれるのが一般的な中、冷泉家の「貝合わせ」は全て草花がほどこされています。
 200組の貝の中側に金地をほどこし、松、竹、梅、桜、牡丹はもとよりゼンマイ、スギナ、サトイモ、カボチャといったものから、エノコログサのような雑草、桜草、ヒマワリといった当時珍しかった花など、色鮮やかに繊細な筆致で描かれ、豪華な植物画を見るようで、和歌が趣を深めています。カラー写真で96ページにわたり紹介されています。
 また、冷泉布美子氏が生まれ育った和歌の家に代々伝わる年中行事への思い出や、娘の貴美子氏、作家の円地文子など7人の多彩な執筆陣による貝合わせにまつわるエッセイが収録されています。
 82年に発行されたものに、新たな文章を加えて再版されたものです。(書肆フローラ、141ページ、3600円+税)
 *「貝合わせ」 ハマグリの貝がら2枚を1組とし、貝の片方だけを裏返しに並べて、他の一方を選んで対をつくる遊びです。