京都市議会で5日、原爆症の認定基準改正を国に求める意見書が全会一致で可決されました。同趣旨の意見書可決は府内の市町村議会で初めてです。
 意見書は、国内の約25万人の被爆者の内、原爆症認定が約2200人にとどまっており、「認定基準が古く、被ばくの実態を反映していない。近時の科学的根拠に基づくものになっていない」とし、厚生労働省が多くの認定申請を却下していることに、「高齢化している被爆者の救済が人道的見地、社会的見地からも一刻の猶予も許されない」とのべ、国にすみやかに原爆症認定基準の改正を行い、被爆者の事情に即して迅速、適正な対応をとることを求めています。
 この日の本会議には、同懇談会の世話人ら10人が傍聴し、採択を見守りました。8歳の時、広島で爆心地から1・1キロの地点で被ばくした大原博さん(70)=右京区=は、「前立腺がんが発症し、現在認定申請中です。改善を求める意見書が通ったことはうれしい」と話しています。原爆症認定制度の改善を求めている京都原水爆被爆者懇談会(世話人代表・永原誠氏)は、「平均年齢74歳の私たちにもう時間はあまりありません。力強い応援として意見書採択に心からお礼を申し上げるとともに、厚労省が姿勢を改める日まで、引き続き京都市在住800人を超える被爆者にお力添えをいただきたいと切望しています」とのコメントを発表しました。
 原爆症認定をめぐっては、全国で283人(京都9人)が集団訴訟に取り組んでいます。これまで出された大阪、広島、名古屋、仙台、東京、熊本の各地裁判決では、いずれも被ばくの実態に合わない現行認定制度の誤りを厳しく指摘し、原告が勝訴。しかし、国は控訴し、見直しを拒否しています。
 こうした中、超党派の国会議員で見直しを求める声が上がり、8月に安倍首相(当時)が広島の被爆者代表と面談し、認定制度の見直しを言明しました。
 現在、厚労省が専門家による検討機関で年内に結論を出すとしているほか、与党プロジェクトチームが12月初旬をめどに救済案をまとめる方針です。