経済産業省は18日、今秋に「近代産業遺産群」に認定するリストを初めてまとめました。幕末から戦前にかけての各地につくられた産業遺産を掘り起こしての選定で、全国46都道府県にまたがる33群、300カ所以上の個別遺産で構成されています。京都からは琵琶湖疎水を中心とした産業遺産群(琵琶湖疎水、蹴上発電所、島津創業記念館)と灘・伏見醸造業関連産業群(伏見区の松本酒造酒蔵、神戸市の白鶴酒造資料館)の二つが選ばれました。
 写真は琵琶湖疎水の一部である蹴上のインクライン(傾斜鉄道)。東山のトンネルから出てきた琵琶湖疎水から岡崎の動物園までは落差があります。この落差を利用して世界で2番目の水力発電所がつくられ産業動力源とするとともにわが国初の路面電車を走らせました。また、広大な蹴上浄水場建設も今日の京都の根幹です。
 一方、この落差でも運搬船が上り下りできるようにインクラインが敷かれました。写真はインクラインの一番上で台座に乗っている舟。写真左側にある大きな車輪にワイヤーが仕組まれてケーブルカーのようにバランスをとりながら上下させます。まさに船山を登るで、琵琶湖から山科丘陵を経て蹴上から岡崎と琵琶湖疎水はつづき、鴨川東側を流れ伏見インクラインから濠川へ流れ込み、さらに伏見三栖閘門で宇治川に合流します。京阪電車などができるまで大阪、京都、大津の重要な輸送路になっていました。
 いずれも西洋技術が導入されて間もない当時にあって琵琶湖疎水の膨大な全体の設計、施工と総責任者となったのが28歳の青年技師田辺朔郎で全力を尽くし、その偉業は多大。1885年(明治18年)に起工しました。三井寺下を貫通する2436メートルのトンネルは最も困難を極めましたが1890年に通水式を迎えました。(仲野良典)