正月三が日は東山大和大路の六波羅蜜寺では写真のように元旦に汲んだ若水を沸かした皇服茶(おうぶくちゃ)が振舞われます。お茶には小さい梅干と結び昆布が入っていますが、これは六波羅蜜寺にかぎらず京の町衆の昔からの慣わしです。元旦の御節料理や雑煮を食べる前に飲み一年の悪気を祓います。大福茶・大服茶・王服茶とも書きますが元は大服茶でお茶を大量に飲むところから来ているといわれ、昆布と梅干とお茶で病気を祓う健康飲料という庶民の知恵は昔からあったようです。
  皇服茶のいわれですが、平安時代の951(天暦5)年に京の都で悪い疫病がはやり賀茂川にはたくさんの死体が放置されていました。この苦難の時に歓喜踊躍(かんきゆやく)念仏唱和の功徳を広めた六斎念仏の始祖である空也(六波羅蜜寺の開創)上人が人々のためにつくった観音像と、お湯に茶と小梅に茗荷(みょうが)を入れた大きな樽に八葉蓮弁の形に割った青竹でかき混ぜての薬湯をつくり、これを車に載せて苦しんでいる庶民や病人に振舞うボランティア活動を連日行ったと伝えられています。時の村上天皇もこの薬湯を飲んで快癒して、皇服茶と書くようになり、その後毎年行われるようになったと伝えられています。
  大福のまづ霞(かすみ)たつあした哉(宗敏)                     (仲野良典)